今日、生まれて初めて靖国神社に行った。率直な感想としては、敷地が無駄にでかいこと、奉っているのが「英霊」であること以外は普通の神社と大して変ってはいなかった。
たが、参拝後赴いた遊就館で自分は「靖国らしさ」というものを感じた。この靖国神社附属の戦争資料館では、大和王朝から太平洋戦争までの日本の戦争史が、 図や模型、ときには実物やビデオなどのふんだんな資料を用いて概説されていた。そこで自分が気付いた・感じたことをいくつか羅列してみたい:
1.全体的に、日本という国(そして天皇制)がまるで古代から脈々と続いてきたともとれるような歴史説明をしている。
2.展覧の参観者には若者が多い。
3.明言はしていないものの、明治維新以降日本が行ってきた戦争(日清、日露、太平洋)を自衛戦争と定義している。
4.日本にとって不利な出来事(南京大虐殺、アジア諸国における日本軍の違法行為)は排除しながらも、太平洋戦争後のアジア諸国の独立をさも日本の功績であるかのような説明をしている。
5.全体的として、日本軍がどれだけすごかったか!ということをアピールしている(特に日露戦争のコーナーは必見)。見ていて気持ちがいい。
今回は祖父母とともに靖国を訪れたのだが、約2,30年前に一度来たことのある祖父によると、以前と展覧の仕方が違うという。というのも、昔は、特攻隊の 遺品の展示ばかりだったのが、今では日本の戦争史を古代から追って説明しているという。祖父の言葉を借りると、このような変化は過去の戦争を今の世代に とってもわかりやすくする試みとして評価できると同時に、「軍国主義のにおいがする」らしい。
祖父の見解に関しては自分も同意できる。確かに、ナショナリズム自体は大いに結構だが、自分に都合のよいように歴史を解釈し、過去の事実をも捻じ曲げてまでそれを高揚しようとするのは、日本の未来世代にとっても決して望ましいことではないのだろう。
しかし、現在の靖国神社が私的宗教施設であることを踏まえると、靖国なりに独自の歴史観を有するのは特に問題ではないし、実際それが必要なのだろう。なぜ なら、戦争を肯定し、正当化しなければ、旧日本軍の戦没者は全員無駄死にしたことになってしまうからだ。これは靖国神社の存在意義を否定することになるだ けでなく、戦没者遺族にとっても認めがたいことであろう。
ここに靖国神社の限界がある。即ち、靖国神社だけに日本の戦争史の解釈を任せると、立場上どうしても偏ったものになってしまうのだ。そのため、太平洋戦争 という敏感なトピックを扱うには、国家による公式の歴史評価が先立って必要になってくるのだろう。少なくとも、靖国神社に行くときは、前述したような「偏 り」に注意したほうがよいだろう。
ちなみに、遊就館附属の喫茶店内で食べた海軍カレーは美味しかったのであしからず。